2010年12月12日日曜日

キショウブ(アヤメ科)

キショウブ(アヤメ科)
 日本では帰化植物の扱いを受けるキショウブ。
 しかし西洋では最も古くから観賞された種類の一つで、フランスのブルボン王朝の紋章フルール・ド・リのモデルはこの花という説がある。

 この写真は確かどこかの病院の庭だったと思うが、京都でもあちこちの寺院で見かける。勧修寺でも見たなぁ。

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イチハツ(アヤメ科)

イチハツ(アヤメ科)
 中国原産のイチハツ。漢字で書くと鳶尾、一八、一初などとなる。学名Iris tectorumのテクトルムは屋根に生えるという意味からきており、英名のWall Irisもその辺のネーミングの模様。
 日本ではシャガと一緒に扱われる場合が多かったようで、貝原益軒『花譜』はシャガを「鳶尾の類」と記している。
 なお、この写真は宇治市の恵心院にて撮影。恵心院は知る人ぞ知る花の寺である。

イチハツ(アヤメ科)
 これは府立植物園。

 なお、アヤメの仲間では一番に咲くからイチハツだという説があるわけだが、まぁ話半分でいいのではなかろうか。どうせ語源説自体がアテにならないのだし。

※本家ブログに注力していたので、こちらは長らく放置していた。放棄したわけではないので、今後も時々更新します。

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2010年8月23日月曜日

イブキジャコウソウ(シソ科)

イブキジャコウソウ(シソ科)
 ランキングサイトのプロフィール写真にもしているイブキジャコウソウ。しかしこれがどうにも分かりにくい植物だ。
 何が分かりにくいかというと、その名前で植えられている植物が、本当に同一種なのか疑わしく思えることが多いのだ。

 これは某所で撮影したもの。かなり信頼性の高いイブキジャコウソウである。

イブキジャコウソウ(シソ科)
 これは文字通り伊吹山の山頂に咲くイブキジャコウソウ。まさか本物でないということはなかろう……と思う。
 ただし、一枚目とこれを比べても、植物の大きさがやや異なる。伊吹山の方が大柄である。

 イブキジャコウソウは高山から海岸まで自生する奇妙な植物である。もちろんどこの山や海岸にもあるわけではなく、どちらかと言えば蛇紋岩や石灰岩地に目立つ(伊吹山は石灰岩)。
 私が子どもの頃によく登った山形県の月山や鳥海山には自生しないが、蔵王山系には自生するのでちょっと悔しかった記憶がある(蔵王は蛇紋岩でも石灰岩でもないが、奥羽山脈では古い山だ)。 

イブキジャコウソウ(シソ科)
 これはイブキジャコウソウかどうか定かでないもの。
 何せ、木曽の妻籠で撮影した写真だ。要するに花壇に植えられた花である。ただし伊吹山の株に一番近い大きさなのも事実である。

イブキジャコウソウ(シソ科)
 そして最後は京都府立植物園。紛れもなく「イブキジャコウソウ」と書いてあるのだが、他と比べても著しく小さい。
 花の付き方も違うし、枝が立ち上がっているのも怪しい。西洋のいわゆるタイムではないかと思うけどなぁ……。

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2010年8月20日金曜日

アーティチョーク(キク科)

アーティチョーク(キク科)
 最近あんまり更新していないので、とりあえず手持ちの写真を載せてみる。
 日本では滅多に食べない野菜の花である。

アーティチョーク(キク科)
 一応、和名はチョウセンアザミとされている。が、朝鮮半島原産でもないし、朝鮮経由で伝わったわけでもなさそうだ。
 チョウセンアサガオのような例もあるので、あるいは薬草としてイメージされていたのかな、とも思われる。薬効についての知識はないけどね(どんな植物でも、探せば何らかの薬効はあるだろう)。

アーティチョーク(キク科)
 こちらが蕾の状態。野菜としては、開いてしまったらダメだ。
 蕾を食べる野菜は、カリフラワーやブロッコリーをはじめとして少なからずある。植物がその最大のエネルギーを費やす花の栄養分を、消費前に分捕ってしまうのだから、非人道的な行いと言えなくもない。
 ……植物相手に人の道を説くのもどうかと思うが、エセ環境保護の人たちは、たいてい擬人化によって説明するわけだ。ああそういえば、根菜が非人道的という宗教もあったな。その線でいくと、アーティチョークなんて打ち首獄門みたいなものだろうな。

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2010年7月28日水曜日

ハナキリン(トウダイグサ科)

ハナキリン(トウダイグサ科)
 マダガスカル原産で、日本ではハナキリン(花麒麟)の名で流通するトウダイグサ属の常緑低木。トウダイグサ属とはEuphorbia、つまりユーフォルビアであり、この花もそういう分類で売られているようだ。
 写真の右側の赤い花がそれだ。撮影地は台南市内の植え込みである。
 なお、赤い花と呼んではいるが、赤い花弁のように見えるのは総苞葉だ。

ハナキリン(トウダイグサ科)
 同じく台南市内の城隍廟前の広場に植えられていたもの。トゲに覆われた幹が見える。
 日本では温室栽培されるこの花も、台湾では路地で普通に育つ。そしてそれ故に、最近槍玉に上がっているらしい。このタイミングで取り上げる理由は、そうしたニュースを耳にしたためである。

ハナキリン(トウダイグサ科)
 台南市の開元寺にて。
 自由時報の記事だが、公園路燈管理處の資料によれば、台北市内の街路には64種の有毒植物があるという。なかでも危険な2種として、海檬果(キョウチクトウ科のミフクラギ)と麒麟花(ハナキリン)が挙げられる。
 一般にトウダイグサの仲間は茎を傷つけると白い液体がしみ出し、これが有毒とされる。ハナキリンもまさしくトウダイグサ属の特徴をそなえているわけだ。

 とはいえ、誤って口に入ると危険だから植えるな、という論理はどうなんだろうか。そんなことを言い出したら、日本中の庭からアセビを刈り取らなきゃいけない(アセビの毒はハナキリンの比ではない)。

ハナキリン(トウダイグサ科)
 最後の写真は京都府立植物園にて。温室の隅に咲いていたものである。
 台湾にハナキリンが伝わったのは1868年頃らしい(『福爾摩沙植物記』による)。元々が外来の植物だから、駆除してもいいのでは……という考え方にも、必ずしも賛同できない。

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2010年6月21日月曜日

ナツハゼ(ツツジ科)

ナツハゼ(ツツジ科)
 ネジキといえばナツハゼだ。
 こちらも花をじっくり見ればいかにもツツジ科だが、ネジキどころではない地味さがネック。山に生えていてもなかなか気付かない。

ナツハゼ(ツツジ科)
ナツハゼ(ツツジ科)
 上の二つは、まだ若い果実を写したもの。だいぶ昔の写真なので、当時のデジカメの限界でボケまくった。安物カメラには厳しい植物である。
 ちゃんと熟した実は、食べられる。この写真は7月だから、あと一ヶ月ぐらいしたら熟したのではなかろうか。
 なお、この実の写真の撮影地は、嵐山の亀山公園の一番奥である。川沿いの、トロッコ列車を見下ろす辺りに、何本かナツハゼが自生している。

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ネジキ(ツツジ科)

ネジキ(ツツジ科)
 ライアニア(ネジキ)属の落葉小高木。関西では6月はじめぐらいにコッソリと花を咲かせる。
 枝の下に隠れて咲く上に、開花時期が短いので、存在を知っていなければ何年経っても気付かないような花だ。

ネジキ(ツツジ科)
 日本のネジキは、中国などの母種に比べてやや小さめということで変種の扱いらしい。
 小学館の『園芸植物大事典』では中国名を南燭とする。ただし『本草綱目』あたりの南燭は一般にはシャシャンボ説が有力。日本ではナンテンに宛てられたので、そういうのを間違いだと指摘したがる牧野富太郎なんかが取り上げている。

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ギンロバイ(バラ科)

ギンロバイ(バラ科)
 キンロバイの白花版で、ハクロバイともいう。
 キンロバイ同様に、日本だけに分布するわけではないが、日本では本州中部以西の石灰岩の山に限定されるようだ。

ギンロバイ(バラ科)
 ひどい写真で申し訳ない。
 自生地には大台ヶ原山、剣山、石立山などが挙げられるが、絶滅していない山がどれほどあるのか不明。奥秩父も滅多に見つからないようだし、南アルプスで見るか麓の庭や植物園で見るしかなさそうだ。

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2010年6月20日日曜日

キンロバイ(バラ科)

キンロバイ(バラ科)
 キンロバイはいちおうキジムシロ属に分類されるが、他と違って低木なので独立属扱いの場合もある。種そのものはヨーロッパにかけて広く分布しており、しばしば庭に植えられている。

 ここに載せる写真は小石川植物園のもので、わざわざ紹介する価値もなさそうに思えるが、ミツバツチグリのついでである。

キンロバイ(バラ科)
 ただし自生地となると、かなり限られる。北海道の礼文島、崕山、アポイ岳、本州の早池峰山、至仏山、南アルプス北岳など、蛇紋岩や石灰岩の山が主な産地とされる。
 実際には、それ以外でも条件があえば自生するようだ。東北では焼石岳がその例だし、蔵王山周辺の岸壁などにも自生地がある。いわゆる生存競争に負けたパターンか。

 キンロバイにはもう一つの特徴がある。白花の変種の存在だ。花の色ぐらいしか違わないのに、分布が大きく異なるわけである。

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ミツバツチグリ(バラ科)

ミツバツチグリ(バラ科)
 南アルプスではなぜか高山まで分布するミツバツチグリ。ツチグリは奇妙な形のキノコだし、どういう命名なのだろう。

ミツバツチグリ(バラ科)
 バラ科キジムシロ属に分類されている。キジムシロ、ミヤマキンバイなどと同属ということになる。
 ミヤマキンバイは通常生育地域が違うからいいとして、キジムシロとは葉が違う。文字通り三つ葉が特徴。まぁ三つ葉で黄色の花にはヘビイチゴなんかもあるけどね。

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クサノオウ(ケシ科)

クサノオウ(ケシ科)
 やたらとカッコイイ和名で知られる、ヤマブキソウの仲間だ。
 「草の王」「瘡の王」「草の黄」といった文字が宛てられているようだ。貝原益軒『大和本草』では「白屈菜」として紹介され、「今俗ニ草ノ王ト云」とある。そして「ヨク瘡腫ヲ消ス」ともある。

クサノオウ(ケシ科)
 まぁこの名が薬草としてのものならば、「王」ではなく「黄」だろう。大黄(タデ科の薬草)に習った名ではなかろうか。もちろん大黄も草なので、「草の黄」はやや疑問。『大和本草』の記述からみれば、「瘡野黄」辺りか?
 いずれにせよ、ここでの推測は当てずっぽうの域を出ない。ただ、世の中で広まっている語源説も、この程度の当てずっぽうが多い。牧野富太郎の語源説がしばしばデタラメなように(本気で考えるなら、まず地方名を集めるべきだろう)。

 余談になるが、大黄がらみで素晴らしい名前の高山植物があるのをご存じだろうか。
 その名もカラフトノダイオウ。「樺太の大王」ではなく「樺太野大黄」である。

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2010年6月19日土曜日

ヤマブキソウ(ケシ科)

ヤマブキソウ(ケシ科)
 ヤマブキといえばヤマブキソウ。
 似ているといえば似ているが、見間違うわけはない。葉も違うし、花弁の数も違う。

ヤマブキソウ(ケシ科)
 この花は終わりかけ。

ヤマブキソウ(ケシ科)
 ケシ科といっても、クサノオウと同属なのでそういう役には立たない。立たないが有毒なので、摘み取ったりするのはそれなりにリスクがあるかも。
 まぁそもそも、業者に採り尽くされて自生の花なんて滅多にお目にかかれない。ヤマブキソウは日本の特産種なので、そのうち野生絶滅なんてことになるのかな。

 数年前に伊吹山で見かけたヤマブキソウも、非常に不自然な咲き方だった。たぶん植えられたものだろう。伊吹山頂ではイブキジャコウソウなんかも植えられていたりする。いくらその山に自生が確認されているとはいえ、疑問の残る行為だ。登山者にむしり取られて絶滅したものを、登山者に見せるために植え直すならなおさらだ。

 最近は個人で種をばら撒くバカもいる。コマクサを方々の山に植える連中は有名である。自分にとって商品価値のあるもので埋め尽くされていなければ、そこは「空き地」なのだ。
 ガーデニングなんて小綺麗な言葉を使っても、結局は自分の都合に合わせて生物を選別するだけ。所詮は土地に負荷をかけて、望まない生を強いるだけ。だからどこの庭だって、持ち主の欲望が顕在化している。良い悪いはともかく、園芸ってそういうものでしょ?

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シロヤマブキ(バラ科)

シロヤマブキ(バラ科)
 ヤマブキとは属から違う全くの別種シロヤマブキ。ヤマブキの園芸品種にシロバナヤマブキがあるから、なおさらややこしい。
 とはいえ、両者の判別は簡単だ。シロヤマブキは花弁が4枚、対してヤマブキの花弁は5枚ある。

シロヤマブキ(バラ科)
 実はこちらも日本と中国(と朝鮮半島)にしか自生せず、1属1種である。日本ではヤマブキより遙かにレアで、岡山県などごく一部にしか自生しない。自生地は石灰岩地だったりするらしい。
 別にアルカリ性の土壌じゃないと育たないという話は聞かないので、石灰岩地が好きなのではなく、石灰岩地でも大丈夫だった部類なのかな(生存競争に負けた種が、条件の悪い石灰岩地や蛇紋岩地に残存することがある)。

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ヤマブキ(バラ科)

ヤマブキ(バラ科)
 学名は「Kerria japonica (L.) DC.」。日本特産ではなく、中国にも分布するが、いずれにせよアジアのみに分布する。さらに言えば、ヤマブキ属はヤマブキ一種のみである。

ヤマブキ(バラ科)
 遠目にはきれいでも、近くで見るとボロボロなのよね。
 花弁はだんだん色が落ちて白っぽくなる。

ヤマブキ(バラ科)
 園芸品種のヤエヤマブキ。これは間違いなくヤマブキの変形だが、例によってあまり縁の近くない植物にいろいろ「ヤマブキ」の名がついている。その辺の紹介は次の記事以降で。

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2010年6月14日月曜日

ラカンマキ(マキ科)

ラカンマキ(マキ科)
 ここで紹介しても需要がなさそうだが、ともかくイヌマキの園芸種である。
 なお「槇」の名をもつ植物は非常にややこしいことで有名である。ともかくこれはラカンマキの花。

ラカンマキ(マキ科)
 新芽の様子。

 イヌマキとラカンマキは親類だが、コウヤマキはマツ科で赤の他人。もっとややこしいのはチョウセンマキで、これはイチイ科イヌガヤの園芸種である。イヌマキとイヌガヤなんて、見た目は全く似ていないけど、混同している人が時々いるようなので注記しておこう。
 まぁそのうち名前を出した木も掲載する予定。

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