2011年4月28日木曜日
オウソウカ(バンレイシ科)
オウソウカといっても、どっかのオヤジが偉そうに頷いているわけではなく、鷹爪花の音読みに過ぎない。
というか、日本ではほとんど栽培されないから、基本的に和名は存在しない。ただしご近所の国ではわりとポピュラーだから、とりあえずその名を拝借しただけだ。
学名はArtabotrys hexapetalus (L. f.) Bhandanである。アルタボトリス属で、日本で栽培される種類は特にない。そもそもバンレイシ科はほぼ熱帯のみの仲間である。
あいにく実の写真しかない。鷹爪花、鷹爪蘭、鷹爪桃、鷹桃花、油桃花などの名前のうち、「桃」はこの実の形に由来する。桃の実というか、中の種のほうね。
この植物は中国南部原産で、南方では非常に人気がある。それは強い香りの花から香料をとったため。東南アジアでは産業植物として栽培されている。
写真はいずれも台湾台南市の開元寺にて撮影した。
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2011年4月27日水曜日
ギンコウボク(モクレン科)
閩南式の赤っぽい屋根と対照的な明るい緑の葉。これは台湾の台南市にある開元寺で撮影した。
ギンコウボク(Michelia M. × alba DC.)は中国南部などで栽培される常緑高木。オガタマノキの仲間である。
学名でも分かるように、現在は雑種とみなされている。ただし雑種といっても最近のものではないようで、潘富俊『福爾摩沙植物記』によれば、明代には中国南部で栽培されていたという。
ただし潘富俊は雑種説に立たないので、五百年前の話が本種そのものなのかは議論の余地がありそうに思える。
目立つのは葉ばかり。ホウノキに似た感じなので銀厚朴らしい。『園芸植物大事典』に従っているが、ほとんど栽培されないなかで、この和名がどれほど知られているかは微妙だ。
台湾では白玉蘭。これは玉蘭(ハクモクレン)に対する名で、中国の文人が愛好したハクモクレンの代用品的な意味合いもあったらしい(台湾の平地ではハクモクレンが育たない)。
もっとも、大陸ではハクモクレンを白玉蘭と呼んだりもするようなのが困ったところ。その場合、本種は白蘭花だったり白蘭だったりする。
ただし見た目は地味でも、この花は強い香りをもっている。
台湾への伝来は鄭氏政権期とみられているが、それは大陸側でこの花を愛好していた人々が渡ってきたから、同時に伝わったということのようだ。
寒さに弱いので日本での栽培は難しい。しかし温暖な台湾や中国南部においては、比較的育てやすい。
こんな利用法もある。寺廟に捧げられた香花である。しぼんだ白い花にはこれも混じっていると思われる(大半はジャスミンだろうけど)。
この花盆は近寄ると強烈な香りがあって、一度嗅げば忘れられないものだ。ついでに、どうにか売りつけようとするオバサンのしつこさも忘れがたい。
というか、滅茶苦茶高いのよね、これ。台南の某所で、まだ台湾慣れしていなかった私が間違って買ってしまった花盆は、なんと200元(600円弱)もした。だいたい、お菓子付きの拝拝セットでも100元なのだから、べらぼうな値段である。
屋台の飯なら二人で食っても200元には届かないことが多い。とんでもない値段である(しつこいな)。
寺廟にも多い木の紹介が、そんな下世話な話で終わるのもアレなので元に戻す。老木の幹の様子でも見ておくれやす。
花盆以外すべての撮影地の開元寺は、私のお気に入りの場所である。仏教寺院はこういう空気じゃなきゃなぁ、と思えるところなので、皆さんも行ってみよう(詳しくは姉妹ブログを見てね)。
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2011年4月26日火曜日
トウゴマ(トウダイグサ科)
ツノゴマに続いてゴマの名をもつ仲間。もちろんこれもゴマとは関係ないし、食えるわけでもない。というか、絶対に食べてはいけない。猛毒である(加熱すれば分解するという話もあるようだが)。
トウゴマはトウダイグサ科リキヌス属で、日本で育てると一年で枯れてしまう。ただし熱帯では枯れずに高木状になる。10m近くになるらしいぞ。
漢名は蓖麻。これを音読みすればヒマで、日本でもこの名で呼ばれることが少なくない。
枝の上から順番に咲くので、イガイガの実の下には、お世辞にも美しいとは形容できない花が咲いていたりする。
汚れた泡のような雄しべはさておき、この植物は熱帯アフリカのどこかに自生していたものが、世界中の熱帯に広まった経緯をもつ。それだけの価値があったわけだ。
ヒマの名で分かる人は分かるはずだが、この植物の種子をしぼると、油がとれる。先に述べたように猛毒なので決して食用油にはならないけれど、工業用油としては優秀だ。つまり、ヒマシ油である(漢字で書けば蓖麻子油)。
繁殖力が強いので、各地で雑草化しているそうな。
潘富俊『福爾摩沙植物記』によれば、台湾にはオランダ統治期に伝来したが、日本統治時代に大量栽培がなされたという。ヒマシ油の品質もさることながら、成長が早くてすぐに収穫できるという利点もあったようだ。
ただし、経済栽培ができなくなると、一転して厄介な帰化植物と化すことになる。皮膚病などの薬として利用することもできるそうだが、何しろ毒があるので、一般人が適当な知識で使うわけにもいかないだろう。
上の写真のように花が咲きかけの頃は、比較的見栄えもする。いけばなへの利用が、昨今では一番ポジティブな利用法なのではなかろうか。
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2011年4月25日月曜日
ツノゴマ(プロボスキデア科)
ゴマとは全く無関係なツノゴマ。熱帯アメリカ方面の原産だ。
写真のように、その実がなんかの角っぽいから角胡麻。属名プロボスキデアはギリシャ語の「象の鼻」だそうで、いずれにせよ反り返った実の形に由来する。
で、何がゴマなのだと問われれば、花が似ているということだろう。確かに花だけ見ればゴマに似ている。
観賞用に植えるには、でかい葉が目立つばかりで今ひとつ。ただ、どちらにせよ一年草だから、温度が保てれば栽培はできそうだ。
なお、若い果実はピクルスの材料とされているらしい。
こちらは花の色が濃いもの。生育環境の問題かと思ったが、どうも別種のようだ。
プロボスキデア属はたった9種しかない小さな仲間。そのうち、ツノゴマ以外にも、もっと濃い花色の植物が栽培される模様(フラグランス種)。もしかしたら、上の写真はその種かも知れない。
なお、キバナツノゴマについては次の記事で紹介する。
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2011年4月24日日曜日
プルメリア(キョウチクトウ科)
熱帯アメリカ原産のプルメリア。プルメリア属の落葉小高木である。
ハワイなどでも盛んに栽培されていて、レイの材料ともされる。一方でこの花は東南アジア方面でもポピュラーだったりする。
上の写真は、台湾台南市の安平にある安平古堡にて撮影。
安平古堡とは、17世紀にオランダが台湾を支配した際のゼーランジャ城だが、プルメリアもオランダ人が伝えたらしい。台湾では三友花、緬梔、雞蛋花、番茉莉などの名がある。
三友花の三友は普通は松竹梅だが、この場合はよく分からない。詩文に多かったようだ。
緬梔の梔はクチナシのこと。緬は細い糸の意味だが、緬甸(ビルマ)かも知れない。東南アジア経由で伝わったという認識なら後者だろう。現在の台湾では、学術表記はこれを用いる。
番茉莉は直前の記事の番石榴と同じく、西洋から伝わった意味の番と、茉莉花(ジャスミン)。プルメリアはかなり強烈な香りがある。
問題は雞蛋花だったりする。これは文字通り鶏の卵の花で、中央が黄色くて淵が白い花の色から名づけられた。しかし実は、野生のプルメリアの花はこの色ではないのだ。
どうやら台湾には、野生種系ではなく黄色と白の園芸品種が先に伝わったらしい。実際、街で見かける花はほとんどこの色である。
こちらが野生種に近い色。たまに栽培されている程度だ。
なお、プルメリアを仏教における聖なる花とする見解が、ある時期には存在していたらしい。
1772年成立の朱景英『海東札記』巻三には、次のような項目がある。
貝多羅花、樹多癭結、枝皆三杈、葉如枇杷、而厚韌過之、可以寫經、所謂貝葉也。
花瓣五出,間有六出者,大如小酒碊。瓣皆左紐白色、近芷則黄苞微紫、香如擘橙、日開數萬朵、落地如鋪銀。略無萎意。
余署前庭一株、老樹屈蟠、婆娑廣蔭、竟歳在馥郁中、殊饒佳致。
貝多羅とは古代インドで紙のように用いられたもので、経典が書かれることから神聖視される。普通はパルミラヤシの葉のはずである。
しかし、ここで貝多羅として紹介される内容を読めば、ヤシ類ではないとすぐに分かる。白い花が咲き芳香のあるこの植物を、潘富俊『福爾摩沙植物記』はプルメリアととらえている。
寺廟に飾られたり、はたまた葬儀に使われたり、そうした宗教的色彩を与えられたからこそ、ポピュラーな花になったのかも知れない。
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2011年4月23日土曜日
バンジロウ(フトモモ科)
ここは台湾台南市内のとある小学校。校庭に植えられた木の一つに、白い花が咲いていた。
ギンバイカとかフェイジョアみたいな花だなぁ……なんて思えたなら、ほぼ正答に行き着いている。え、無理だって?
まぁ冗談はさておき、これはバンジロウの花だ。バンジロウというよりもグァバと呼ぶ方が一般的だが、一応日本ではバンジロウが一般的だったはず。別にどっかのオッサンの名前ではなく、番石榴の音読みだ。
なお番石榴は番の石榴で、石榴はザクロを指す。番は本来は中国西方の異民族だが、この場合は西洋人が伝えたことを意味しているだろう。
原産地は熱帯アメリカで、スペイン人が西洋に伝えた。台湾にはオランダ統治時期に伝来したらしいが、オランダ人が運んだかは分からない。台湾にはスペインも拠点を作ったから(後にオランダに追い出される)、スペイン経由の可能性もありそうだ。
フラッシュが光って嫌な感じの写真だ。申し訳ないが、これは撮影地が悪い。なんと京都府立植物園の温室だったりする。
熱帯植物を紹介するのに、日本の温室の写真を載せるのは、個人的にはかなりの敗北感を伴う。読者にはどうでもいい話だな。
こうやって果実を見れば、グァバと呼んだ方がいいだろう。
実際のところ、現在は台湾でも番石榴とは呼ばれていない。一般には芭樂で、まさしくグァバのあて字である。ついでにいうと、芭樂は北京音だとパーラーになるので、水果店が名前に使ったりしている。台南の夜市の例はこちらを御覧くだされ(リンク先は姉妹ブログでござる)。
これも府立植物園。
どうも生食ではうまいと思えなかったので、写真が乏しい要因となっている。台南の水果店で飲んだ原汁(100%ジュース)はうまかったけどね。
府立植物園で終わるのもアレなので、最後は市場の写真でしめる(台北市内)。
1個50円ぐらいのようだ。買ってないけど。
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2011年4月22日金曜日
レンブ(フトモモ科)
日本では滅多にお目にかかれないレンブ。中国名は蓮霧。フトモモ科フトモモ属の常緑高木で、その高さはゆうに10mを超える。
フトモモ属は丁子(クローブ)を擁する仲間で、基本的には熱帯植物。本種はインドネシアやマレーシア方面の原産らしい。
フトモモ属の花の特徴は、見ての通りの雄しべ。それなりに観賞にたえる花だけど、何せ巨大な木にまばらに咲くので、案外目立たないのである。
液果は通常は赤く熟す。熱帯では年中花が咲いて実っているので、いつが旬とも言いがたいが、本来は夏の果実である。
写真の右側に茂る大樹がレンブ。ここは台湾の台南市にある西華堂という仏教寺院である。
仏教寺院とレンブには、実は深い縁がある。
その昔、釈尊がまだ俗人のシッダールダだった頃に、彼は閻浮樹(えんぶじゅ)という大木の下で瞑想にふけった。閻浮樹とは閻浮提(えんぶだい)の樹、閻浮提は仏教的宇宙において、人間の暮らす大陸を指している。閻浮樹は従って、神話世界における世界樹のような存在なのだろう。
現地の発音でジャンブーとなる閻浮樹は、東南アジアではレンブの仲間を指すと考えられるようになった。同属のムラサキフトモモを指す例が多いものの、本種やフトモモ(沖縄で栽培される)も同様に捉えられることになる。
つまりレンブは仏教世界の聖なる樹なのだ。
そして、レンブという名前も「閻浮」に由来するという想像ができる。
こちらは台南市安平にて。花と実が同時に見える。
台湾にはオランダ人が持ち込んだという。安平はオランダがゼーランジャ城を築いた当時の本拠地であり、台湾レンブの起源の地ということになる。
ただし、実際に定着したのは19世紀のことらしく、台湾の特産品として書物に載るのは1871年の『福建通志台湾府』である。
なお、台湾では蓮霧の他に、染霧、軟霧、剪霧、輦霧、連霧などさまざまな表記がなされていた。要するにマレー方面から伝わった音に、それぞれ漢字をあてたわけである。
菩提果と記した例もあるようで、閻浮樹の伝承は確実に知られていたと思われる。
市場ではこんな感じで売られている。
現在では品種改良によって果実も大きくなった。色も赤だけでなく、白っぽいまま食べるものも目立つ。
味はリンゴとスポンジの中間……と表現すると、ちっとも美味しくなさそうで申し訳ない。基本的には水分補給のための果実だと思う。ちなみに、三角形の果実の細い方(枝側)が、実が詰まっていてうまい。
これは高級種。扱いもだいぶ違う。
本当に高級なものを食べると、みずみずしさに驚かされる。スポンジ(というか海綿?)ぽさはほとんどなく、かなりリンゴに似た感じだ。値段だけの価値は十分にある(言い忘れていたが、本種はシュガー・アップルと呼ばれる)。
高級と言ってはみたが、台湾の水果店で買うならちっとも高くはない。
写真のものは1斤180元とある(私は買って食べた)。180元は現在のレートでも500円ぐらいだから一見高そうに思えるだろうが、台湾の1斤は600gなので、レンブ1個の値段ではない。1個単位でいえば100円もしないのだ。
まぁ、これが日本に渡ったらいくらになるのか分からない。これは贈答用に使える高級レンブだから、1個500円というのも冗談ではなさそうだ。
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