2011年4月22日金曜日

レンブ(フトモモ科)

レンブ(フトモモ科)
 日本では滅多にお目にかかれないレンブ。中国名は蓮霧。フトモモ科フトモモ属の常緑高木で、その高さはゆうに10mを超える。
 フトモモ属は丁子(クローブ)を擁する仲間で、基本的には熱帯植物。本種はインドネシアやマレーシア方面の原産らしい。

 フトモモ属の花の特徴は、見ての通りの雄しべ。それなりに観賞にたえる花だけど、何せ巨大な木にまばらに咲くので、案外目立たないのである。

レンブ(フトモモ科)
 液果は通常は赤く熟す。熱帯では年中花が咲いて実っているので、いつが旬とも言いがたいが、本来は夏の果実である。

レンブ(フトモモ科)
 写真の右側に茂る大樹がレンブ。ここは台湾の台南市にある西華堂という仏教寺院である。
 仏教寺院とレンブには、実は深い縁がある。

 その昔、釈尊がまだ俗人のシッダールダだった頃に、彼は閻浮樹(えんぶじゅ)という大木の下で瞑想にふけった。閻浮樹とは閻浮提(えんぶだい)の樹、閻浮提は仏教的宇宙において、人間の暮らす大陸を指している。閻浮樹は従って、神話世界における世界樹のような存在なのだろう。
 現地の発音でジャンブーとなる閻浮樹は、東南アジアではレンブの仲間を指すと考えられるようになった。同属のムラサキフトモモを指す例が多いものの、本種やフトモモ(沖縄で栽培される)も同様に捉えられることになる。
 つまりレンブは仏教世界の聖なる樹なのだ。

 そして、レンブという名前も「閻浮」に由来するという想像ができる。

レンブ(フトモモ科)
 こちらは台南市安平にて。花と実が同時に見える。
 台湾にはオランダ人が持ち込んだという。安平はオランダがゼーランジャ城を築いた当時の本拠地であり、台湾レンブの起源の地ということになる。
 ただし、実際に定着したのは19世紀のことらしく、台湾の特産品として書物に載るのは1871年の『福建通志台湾府』である。

 なお、台湾では蓮霧の他に、染霧、軟霧、剪霧、輦霧、連霧などさまざまな表記がなされていた。要するにマレー方面から伝わった音に、それぞれ漢字をあてたわけである。
 菩提果と記した例もあるようで、閻浮樹の伝承は確実に知られていたと思われる。

レンブ(フトモモ科)
 市場ではこんな感じで売られている。
 現在では品種改良によって果実も大きくなった。色も赤だけでなく、白っぽいまま食べるものも目立つ。
 味はリンゴとスポンジの中間……と表現すると、ちっとも美味しくなさそうで申し訳ない。基本的には水分補給のための果実だと思う。ちなみに、三角形の果実の細い方(枝側)が、実が詰まっていてうまい。

レンブ(フトモモ科)
 これは高級種。扱いもだいぶ違う。
 本当に高級なものを食べると、みずみずしさに驚かされる。スポンジ(というか海綿?)ぽさはほとんどなく、かなりリンゴに似た感じだ。値段だけの価値は十分にある(言い忘れていたが、本種はシュガー・アップルと呼ばれる)。

 高級と言ってはみたが、台湾の水果店で買うならちっとも高くはない。
 写真のものは1斤180元とある(私は買って食べた)。180元は現在のレートでも500円ぐらいだから一見高そうに思えるだろうが、台湾の1斤は600gなので、レンブ1個の値段ではない。1個単位でいえば100円もしないのだ。
 まぁ、これが日本に渡ったらいくらになるのか分からない。これは贈答用に使える高級レンブだから、1個500円というのも冗談ではなさそうだ。

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1 件のコメント:

  1. 台湾にチョンプー(レンブー)がある事を始めて知りました。私の大好きな果物です。チェンマイでは、毎日のように買って食しました。生で食べるだけではなく、バンコクでは中にもち米のご飯が入っているのもあります。一昨年の8月に、台北へ行き、チョンプーを探しましたが、残念ながら見つけられませんでした。台湾には無いものと思っていました。良い情報をありがとうございます。次回行く時には食したいと思います。

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