2010年4月26日月曜日

マンゴー(ウルシ科)

マンゴー(ウルシ科)
 高級果実の代表といえるマンゴー。南方に行けば普通にその辺に植えられているので、こうして実がなった様子を見る機会もある。
 ただし腐ってもウルシ科なので、触らないのが無難。人によっては果実の皮の部分でもかぶれるから、間違ってもかぶりついてはいけない。

マンゴー(ウルシ科)
 この木の品種はさすがに分からない(この撮影地は台南市の某観光名所であって、農園ではない)。赤味を帯びているから愛文芒果というほど単純でもあるまいし。もうちょっと大きくなったら判別出来るのかも。

 どうでもいいが、日本で「アップル&マンゴー」って書いてあるジュースが売られているのをご存じだろうか。これはまさしくアップルとマンゴーのミックスで、飲んでもリンゴの味しかしないのに、パックにはマンゴーが描かれているわけだ。
 「アップルマンゴー」とは、愛文芒果というマンゴーの品種名である(下の写真の赤いヤツ)。その高級フルーツを連想させるような名で、似ても似つかぬ味の商品がでまわっているのは、どうにも納得がいかない。マンゴーの味なんてしないんだから、ただのリンゴジュースで売ればいいと思うんだがね。

マンゴー(ウルシ科)
 日本ではトンデモ価格で食えたもんじゃないマンゴーも、産地の国に行けばほどほどで買える(現地の他の果物より安いわけじゃないけど)。店先で熟したヤツを買って食うぐらいは、パックツアーの旅行者でも可能かも知れない。もちろん自由時間が少ない場合は、どこで買うか調べなきゃいけないが。
 写真は台南市の裕成水果にて撮影。台南市では莉莉水果店と並んで有名な水果店だ。

マンゴーかき氷
 裕成水果の看板商品が、このマンゴーかき氷だ。日本のかき氷と違って、氷そのものがマンゴー味。そして季節が合えば完熟マンゴーがどっさり載っている。2~3人でつつく大きさで、価格も台湾的には超高級といっていい(この写真を撮った2009.8時点で170元)が、それでも日本円で500円ほどである。
 なお、台北にあったマンゴーかき氷の有名店は、店主が夜逃げして閉店した。もちろん台北には他にもマンゴーかき氷の店なんて、掃いて捨てるほどあるわけだが、日本人観光客にとっては新たな店を開拓せざるを得ない状況である。
 個人的には、台南で食べることをオススメするけどね。

※裕成水果については姉妹ブログで紹介している

にほんブログ村 花ブログ 花と園芸の豆知識へ
にほんブログ村

キンカチャ(ツバキ科)

キンカチャ(ツバキ科)
 よく知られている話だが、ツバキを椿と表記するのは日本だけである。椿という字は中国にもあるけれど、恐らくそれは偶然の一致に過ぎない。椿・榎・楸・柊と、四季をあらわす木の一つであろう。
 では漢字の本家でツバキ類をどう呼ぶかといえば、山茶である。従って飲用とする木も観賞用の木も「茶」ということになる。キンカチャという名も、あくまでそのような命名なので、この木の葉をお茶にするわけではない。

 日本では植物園の温室ぐらいでしか見かけないキンカチャは、中国の奥地に分布する。この植物の「世紀の発見」によって、ツバキの花色は大きな可能性を広げたらしい。
 まぁしかし、この原生種そのものは地味である。温室内に咲いていても気付かない人が多いぐらいに(けっこう樹高があるので、そもそも花を見辛いのも事実)。

にほんブログ村 花ブログ 花と園芸の豆知識へ
にほんブログ村

2010年4月18日日曜日

チャ(ツバキ科)

チャ
 チャ(Camellia sinensis (L.) O.Kuntze)といえば、明治の開国期に日本が外貨を稼いだ作物である。今ではすっかり紅茶文化圏となった欧米でも、かつては緑茶が消費されていた。
 残念ながら世界の趨勢が緑茶から紅茶に変化すると、あっという間にしぼんでしまう。さらに日本産の茶葉に粗悪品が非常に多く、評価を下げる一因になったらしい。角山栄『茶の文化史』の受け売りだけどね。

トウチャ
 こちらはトウチャ(Camellia sinensis (L.) O.Kuntze f. macrophylla (Siebold ex Miq.) Kitam.)。今回は学名をあえて載せてみた。要するに、形態の差はあるが同じ種だということを示しておきたかった。

チャとトウチャ
 両種を比較してみる(小石川植物園には親切にも一緒に植えてある)。葉の大きさは一目瞭然で、光沢の有無なども含めてずいぶん違う。
 チャの起源は中国雲南省方面の一元説が有力のようだが、ともかくはっきり見た目の異なる系統がいくつかあるのは事実。そして、それらの系統の差が味の差にもつながるらしい。

チャの花
 チャの花。京都の寺社の庭園にはしばしばチャが植えてある。これも枳殻邱で咲いていたものだが、葉の大きさは一番上のチャより若干大きめに見えなくもない。

アッサムチャ
 チャとトウチャは品種関係だが、アッサムチャ(Camellia sinensis (L.) O.Kuntze var. assamica (J.W.Mast.) Kitam.)は樹高が異なるなどの違いがあるため、変種扱い。これは小石川植物園にて撮影した。
 アッサムの名の通り、インド紅茶の葉は基本的にこの系統だが、ダージリンの高級茶葉は中国種らしい。中国種は標高の高い地域に栽培されるようなので、生育条件の問題からなのかも知れないし、本当に味が違うのか試したこともないけどね。
 それ以前に、百年前はともかく今では新品種が続々と投入されているはずなので、アッサム種か中国種かといったアバウトな分類でいいのかという問題があるだろう。 

烏龍茶
 おまけで烏龍茶の葉の写真。撮影は台湾の台南市にある振発茶行である。
 ここでは茶葉を見て、匂いを嗅いで購入する。試飲せずに買うので、多少の当たり外れはあるが、我が家では合歓山高山茶を愛飲している(写真の茶葉は杉林渓の高山茶かも)。
 お茶に凝るというのは難しいなぁ、としみじみ思う。他人の批評を聞いても、基本的には漠然とした感覚的なレベルでしか伝わらない。そこで自分で飲んでうまかった時に、世の人のいうどのレベルのうまさなんだろう?、なんて考えだしたら答が出そうにない。
 まぁ自分で飲んだ範囲の優劣はつけられるわけで、それ以上の議論は好きな人に任せればいいのかも知れない。どんな高級茶葉を買おうが、茶飲は生活の一部なので、ガブガブ飲むしかないのだ。

にほんブログ村 花ブログ 花と園芸の豆知識へ
にほんブログ村

2010年4月12日月曜日

オウコチョウ(マメ科)

オウコチョウ(黄胡蝶)
 マメ科カエサルピニア(ジャケツイバラ)属の木本オウコチョウ(黄胡蝶)。日本でも暖かい地域なら育つが、西インド諸島出身の熱帯植物である。
 この項の写真は、前のホウオウボクと同じく台南市内で撮影した。どうにもホウオウボクと見分けがつかない時があったけれど、こうやって花の作りを見れば全く異なっている。

オウコチョウ(黄胡蝶)
 台南市の延平郡王祠にて。
 台湾への伝来時期がいつなのか調べていないので分からないが、もしも日本統治時代であれば、開山神社の境内に咲いていたわけだ。神社建築と熱帯植物は……、どうだろう?
 極彩色の廟宇でも、沖縄の飾りっ気のない御嶽でも、それなりに似合う気はする。神社建築も朱色を多用するから、案外違和感はないか。

にほんブログ村 花ブログ 花と園芸の豆知識へ
にほんブログ村

2010年4月10日土曜日

ホウオウボク(マメ科)

ホウオウボク(鳳凰木)
 ホウオウボクはマメ科デロニクス属の木本。ジャケツイバラ科をマメ科と区別する場合は、デロニクス属もジャケツイバラ科ということになる。とりあえずここでは小学館『園芸植物大事典』に従っておく。
 上の写真は樹形を見せようと思ったわけだが、何とも冴えない感じになってしまった。ただし、実際のホウオウボクはこんな感じで、ところどころで花が咲いているから、見栄えのしない木の方が多いと思う。

ホウオウボク(鳳凰木)
 いかにも南国の花という雰囲気。花弁は5枚で、ほぼ赤一色だ。
 完全に混同していたオウコチョウは花弁の先端が黄色で、雄しべと柱頭が突き出すので、知ってさえいれば区別は簡単だ。

ホウオウボク(鳳凰木)
 基本的に熱帯の花なので、上の写真では豆果も同時に写っている。これら三枚はすべて台湾の古都、台南市内で撮影したものである。

 元来はマダガスカル島の原産らしいホウオウボクが、台南(というか台湾)に持ち込まれたのは19世紀末、日本統治が始まってからの話。
 台南は今でこそ人口77万の地方都市だが、オランダ、鄭成功、清と続く台湾支配においては、常にその中心であった。清代の末から台北に比重が移り始め、日本統治時代にそれが決定的となったとはいえ、南台湾第一の都市として、日本政府は積極的に改造をすすめたわけである。
 ホウオウボクはそんな日本の都市計画の一環として持ち込まれた。城壁に囲まれた中国の地方都市から、西洋的近代都市に改造された台南市にふさわしい街路樹として、市街地に植えられたのだ。20世紀初頭の台南市は「鳳凰城」と呼ばれ、今ではすっかり市街の景色の一部となっている。
 ただし残念ながら、この木は美しいものの虫害が多く、現在ではかなりが伐られてしまったという。それでも孔子廟の周辺など、あちこちに大木があるので、台南を巡れば一度は見かけるはずだ。

※台南観光については姉妹ブログ「derorenのホ~ムペ~ジ」に極めて詳しく書かれてあるので、是非併読の上、旅してくだされ。

にほんブログ村 花ブログ 花と園芸の豆知識へ
にほんブログ村

2010年4月8日木曜日

ウマノアシガタ(キンポウゲ科)

ウマノアシガタ
 葉の形で命名するとろくなことにならない代表例、ウマノアシガタ。要するにキンポウゲだが、こちらは八重咲きの園芸種に名づけられたとされる。ネットで検索しても同じ説明がそこらじゅうに見える。
 本当にそうだろうか?
 ちなみに伊藤伊兵衛『花壇地錦抄』には次のような項がある。

金鳳花 [中末] 花金色。せんよ、ひとへあり。銀鳳花といふハ白ひとへ。(『花壇地錦抄』巻四・五)
※この書は季節を初・中・末に分類する。「中末」とは中旬以降に咲くという意味。


 17世紀末の時点で、一重も八重も等しくキンポウゲであった。ついでに白の一重はギンポウゲだそうな。念のためギンポウゲで検索したらなかなか笑える結果が出たぞ。

ウマノアシガタ
 兵庫県の某鉄道沿線の土手で撮影。近畿では4月半ばから見頃となる。
 例によって雑然と咲くし、花は小さめだから安物カメラでは撮りにくい。
 無理矢理接写すればこのぐらいになるが、これでは全体像が分からないわけで。

ウマノアシガタ
 伊吹山のウマノアシガタ(6月初旬撮影)。高山植物のミヤマキンポウゲとは違って、あくまで平地と同じ種が矮性化しただけだそうな。
 この形質が完全に遺伝すれば、品種ぐらいにはなるだろうが、そういう扱いでもないようだ。

ラナンキュラス・ゴールドコイン
 キンポウゲ属を学名表記すればRanunculus、ラナンキュラスとなる。従ってウマノアシガタも立派なラナンキュラスなのだが、一般にはこれも八重咲きに限られるようだ。
 上の写真はゴールドコインという、最近流行りのラナンキュラス。いかにも元はウマノアシガタでした、という感じである。まぁ実際にウマノアシガタそのものを改良したわけではないと思うが。

にほんブログ村 花ブログ 花と園芸の豆知識へ
にほんブログ村

2010年4月6日火曜日

ダンチク(イネ科)

ダンチク
 ダンチクはイネ科ダンチク属の多年草。主に海岸近くに自生する。別名はヨシタケ、漢名は蘆竹。
 基本的に暖かい地域の植物で、日本では関東地方以西の太平洋側などに分布する。アジアから地中海沿岸まで分布域は広い。
 ススキやアシとは花の形が違う(というか葉も全然違う)が、興味のない人には区別できないかも知れない。ただ、それらより圧倒的にでかいので、慣れればすぐに分かる。
 和歌山方面などでは、風除けに植えられたり、なれ鮨を包んだりする。その際の呼び名はアセである。

 上の写真は栽培されたもの。斑入りの園芸品種フイリセイヨウダンチク(オキナダンチク)である。この園芸種は原種より小さめと言われるが、しっかり3m近い高さがある。遠くからでもすぐに見つけることが出来るぞ。

ダンチク
 花は秋に咲く。上の写真は9月22日撮影である。
 まぁこの花を見てススキと間違うことはなかろう。

ダンチク
 野生のダンチクは、こんな感じ(香川県の荘内半島にて撮影)。はっきり言って見栄えはしない。荒れた海岸の景色という程度の印象しか与えないだろう。
 なお、海岸近くに自生するくせに、ダンチクは塩分が苦手らしいぞ。まぁダンチクの勝手だがね。

不退寺のダンチク
 しかし庭園にあったりすると、びっくりするほど映えるのも事実。こちらは奈良の不退寺だ(カメラが古いのと日没間近につきイマイチな写真)。

※「蘆竹」
 これが元々ダンチクを指したかは怪しい。元の李衎は以下のように記すが、「秋蘆竹」の説明には、アシに似て荻蔗(サトウキビの類)みたいだとあり、ダンチクっぽく読める。実際、サトウキビとダンチクは葉の付き方が似ている。

蘆竹 出閩越山中、沿海諸郡皆有之、形如蘆故名。戴凱之竹譜云、有竹象蘆因以為名。東甌諸郡縁海所生、肌體匀浄筠色潤貞、凡今之箎匪兹不鳴、今作簫篪之類、聲最清亮、又堪為矛㦸之榦、又堪為筆管、但葉闊而利筍、苦而可食。
秋蘆竹 其竹似蘆身、如荻蔗、冬月不凋挿之如生。(李衎『竹譜』巻第五)

蘆竹[生溪澗濕處叢小葉疎](『福建通志』巻第十一)


にほんブログ村 花ブログ 花と園芸の豆知識へ
にほんブログ村