2010年6月21日月曜日

ナツハゼ(ツツジ科)

ナツハゼ(ツツジ科)
 ネジキといえばナツハゼだ。
 こちらも花をじっくり見ればいかにもツツジ科だが、ネジキどころではない地味さがネック。山に生えていてもなかなか気付かない。

ナツハゼ(ツツジ科)
ナツハゼ(ツツジ科)
 上の二つは、まだ若い果実を写したもの。だいぶ昔の写真なので、当時のデジカメの限界でボケまくった。安物カメラには厳しい植物である。
 ちゃんと熟した実は、食べられる。この写真は7月だから、あと一ヶ月ぐらいしたら熟したのではなかろうか。
 なお、この実の写真の撮影地は、嵐山の亀山公園の一番奥である。川沿いの、トロッコ列車を見下ろす辺りに、何本かナツハゼが自生している。

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ネジキ(ツツジ科)

ネジキ(ツツジ科)
 ライアニア(ネジキ)属の落葉小高木。関西では6月はじめぐらいにコッソリと花を咲かせる。
 枝の下に隠れて咲く上に、開花時期が短いので、存在を知っていなければ何年経っても気付かないような花だ。

ネジキ(ツツジ科)
 日本のネジキは、中国などの母種に比べてやや小さめということで変種の扱いらしい。
 小学館の『園芸植物大事典』では中国名を南燭とする。ただし『本草綱目』あたりの南燭は一般にはシャシャンボ説が有力。日本ではナンテンに宛てられたので、そういうのを間違いだと指摘したがる牧野富太郎なんかが取り上げている。

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ギンロバイ(バラ科)

ギンロバイ(バラ科)
 キンロバイの白花版で、ハクロバイともいう。
 キンロバイ同様に、日本だけに分布するわけではないが、日本では本州中部以西の石灰岩の山に限定されるようだ。

ギンロバイ(バラ科)
 ひどい写真で申し訳ない。
 自生地には大台ヶ原山、剣山、石立山などが挙げられるが、絶滅していない山がどれほどあるのか不明。奥秩父も滅多に見つからないようだし、南アルプスで見るか麓の庭や植物園で見るしかなさそうだ。

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2010年6月20日日曜日

キンロバイ(バラ科)

キンロバイ(バラ科)
 キンロバイはいちおうキジムシロ属に分類されるが、他と違って低木なので独立属扱いの場合もある。種そのものはヨーロッパにかけて広く分布しており、しばしば庭に植えられている。

 ここに載せる写真は小石川植物園のもので、わざわざ紹介する価値もなさそうに思えるが、ミツバツチグリのついでである。

キンロバイ(バラ科)
 ただし自生地となると、かなり限られる。北海道の礼文島、崕山、アポイ岳、本州の早池峰山、至仏山、南アルプス北岳など、蛇紋岩や石灰岩の山が主な産地とされる。
 実際には、それ以外でも条件があえば自生するようだ。東北では焼石岳がその例だし、蔵王山周辺の岸壁などにも自生地がある。いわゆる生存競争に負けたパターンか。

 キンロバイにはもう一つの特徴がある。白花の変種の存在だ。花の色ぐらいしか違わないのに、分布が大きく異なるわけである。

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ミツバツチグリ(バラ科)

ミツバツチグリ(バラ科)
 南アルプスではなぜか高山まで分布するミツバツチグリ。ツチグリは奇妙な形のキノコだし、どういう命名なのだろう。

ミツバツチグリ(バラ科)
 バラ科キジムシロ属に分類されている。キジムシロ、ミヤマキンバイなどと同属ということになる。
 ミヤマキンバイは通常生育地域が違うからいいとして、キジムシロとは葉が違う。文字通り三つ葉が特徴。まぁ三つ葉で黄色の花にはヘビイチゴなんかもあるけどね。

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クサノオウ(ケシ科)

クサノオウ(ケシ科)
 やたらとカッコイイ和名で知られる、ヤマブキソウの仲間だ。
 「草の王」「瘡の王」「草の黄」といった文字が宛てられているようだ。貝原益軒『大和本草』では「白屈菜」として紹介され、「今俗ニ草ノ王ト云」とある。そして「ヨク瘡腫ヲ消ス」ともある。

クサノオウ(ケシ科)
 まぁこの名が薬草としてのものならば、「王」ではなく「黄」だろう。大黄(タデ科の薬草)に習った名ではなかろうか。もちろん大黄も草なので、「草の黄」はやや疑問。『大和本草』の記述からみれば、「瘡野黄」辺りか?
 いずれにせよ、ここでの推測は当てずっぽうの域を出ない。ただ、世の中で広まっている語源説も、この程度の当てずっぽうが多い。牧野富太郎の語源説がしばしばデタラメなように(本気で考えるなら、まず地方名を集めるべきだろう)。

 余談になるが、大黄がらみで素晴らしい名前の高山植物があるのをご存じだろうか。
 その名もカラフトノダイオウ。「樺太の大王」ではなく「樺太野大黄」である。

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2010年6月19日土曜日

ヤマブキソウ(ケシ科)

ヤマブキソウ(ケシ科)
 ヤマブキといえばヤマブキソウ。
 似ているといえば似ているが、見間違うわけはない。葉も違うし、花弁の数も違う。

ヤマブキソウ(ケシ科)
 この花は終わりかけ。

ヤマブキソウ(ケシ科)
 ケシ科といっても、クサノオウと同属なのでそういう役には立たない。立たないが有毒なので、摘み取ったりするのはそれなりにリスクがあるかも。
 まぁそもそも、業者に採り尽くされて自生の花なんて滅多にお目にかかれない。ヤマブキソウは日本の特産種なので、そのうち野生絶滅なんてことになるのかな。

 数年前に伊吹山で見かけたヤマブキソウも、非常に不自然な咲き方だった。たぶん植えられたものだろう。伊吹山頂ではイブキジャコウソウなんかも植えられていたりする。いくらその山に自生が確認されているとはいえ、疑問の残る行為だ。登山者にむしり取られて絶滅したものを、登山者に見せるために植え直すならなおさらだ。

 最近は個人で種をばら撒くバカもいる。コマクサを方々の山に植える連中は有名である。自分にとって商品価値のあるもので埋め尽くされていなければ、そこは「空き地」なのだ。
 ガーデニングなんて小綺麗な言葉を使っても、結局は自分の都合に合わせて生物を選別するだけ。所詮は土地に負荷をかけて、望まない生を強いるだけ。だからどこの庭だって、持ち主の欲望が顕在化している。良い悪いはともかく、園芸ってそういうものでしょ?

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シロヤマブキ(バラ科)

シロヤマブキ(バラ科)
 ヤマブキとは属から違う全くの別種シロヤマブキ。ヤマブキの園芸品種にシロバナヤマブキがあるから、なおさらややこしい。
 とはいえ、両者の判別は簡単だ。シロヤマブキは花弁が4枚、対してヤマブキの花弁は5枚ある。

シロヤマブキ(バラ科)
 実はこちらも日本と中国(と朝鮮半島)にしか自生せず、1属1種である。日本ではヤマブキより遙かにレアで、岡山県などごく一部にしか自生しない。自生地は石灰岩地だったりするらしい。
 別にアルカリ性の土壌じゃないと育たないという話は聞かないので、石灰岩地が好きなのではなく、石灰岩地でも大丈夫だった部類なのかな(生存競争に負けた種が、条件の悪い石灰岩地や蛇紋岩地に残存することがある)。

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ヤマブキ(バラ科)

ヤマブキ(バラ科)
 学名は「Kerria japonica (L.) DC.」。日本特産ではなく、中国にも分布するが、いずれにせよアジアのみに分布する。さらに言えば、ヤマブキ属はヤマブキ一種のみである。

ヤマブキ(バラ科)
 遠目にはきれいでも、近くで見るとボロボロなのよね。
 花弁はだんだん色が落ちて白っぽくなる。

ヤマブキ(バラ科)
 園芸品種のヤエヤマブキ。これは間違いなくヤマブキの変形だが、例によってあまり縁の近くない植物にいろいろ「ヤマブキ」の名がついている。その辺の紹介は次の記事以降で。

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2010年6月14日月曜日

ラカンマキ(マキ科)

ラカンマキ(マキ科)
 ここで紹介しても需要がなさそうだが、ともかくイヌマキの園芸種である。
 なお「槇」の名をもつ植物は非常にややこしいことで有名である。ともかくこれはラカンマキの花。

ラカンマキ(マキ科)
 新芽の様子。

 イヌマキとラカンマキは親類だが、コウヤマキはマツ科で赤の他人。もっとややこしいのはチョウセンマキで、これはイチイ科イヌガヤの園芸種である。イヌマキとイヌガヤなんて、見た目は全く似ていないけど、混同している人が時々いるようなので注記しておこう。
 まぁそのうち名前を出した木も掲載する予定。

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2010年6月7日月曜日

パラミツ(クワ科)

パラミツ(クワ科)
 パンノキと同属のパラミツ。ジャックフルーツの名で知られている。この場合のジャックはジャックさんではなく、マレーシア方面のチャッカといった名が訛ったのでは、という説があるようだ。
 で、波羅蜜はあまりにストレートな仏教用語。しかし波羅蜜という語とこの木が結びつくのかは不明。

 ともかく、かなりの高木であることは、写真の自転車との比較で分かるだろう。そして、果実の大きさもだいたい想像がつくだろう。

パラミツ(クワ科)
 パラミツの果実は、このように太い幹に直接つく。考えてみればクワ科だし、クワやイチジクなどと同じ形態である。なかなか同列に見るのは難しいけどね。

パラミツ(クワ科)
 これはかなりきれいな実。何せ熱帯の樹木なので、収穫がいつなのかはよく分からない。
 実はこの記事の写真は、5月初旬と8月中旬のものが混じっていたりする。区別がつくだろうか?

ジャックフルーツ(クワ科)
 巨大な果実は生食したり、野菜のように食べたりするそうな。種も食べるそうな(残念ながら食したことはない)。

 以上の写真はすべて台湾の台南市で撮影。一枚は学校の校庭、残りは寺院である。名前が名前なので、寺院に植えられるのは分かる気もする。もちろん自給自足の食糧なんだろうけど。

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パンノキ(クワ科)

パンノキ(クワ科)
 熱帯で広く栽培されるパンノキ。植民地の奴隷の食糧として各地に導入されたらしい。
 これは台湾の台南市の写真。台湾には清朝に伝来したとされる(これは奴隷の食糧のためではなかろう)が、今では全島に定着している。
 現地名は麺包樹。麺包とはパンのことだから、そのまんまの名前だ。

パンノキ(クワ科)
 なお、しばしばパンノキの特徴として挙げられるのが、葉が大きく切れ込むことである。しかし台湾で見かけるパンノキは、だいたい写真のような葉で、切れ込みはあっても僅かである(後方の葉に切れ込みが見える)。
 ただし、品種として区別する見解は(軽く確認しただけだが)見当らないので、あくまで生態形の範囲なのだろう。

 パンノキ属は、言うまでもなくこの巨大な果実が特徴である。パンノキよりも遙かに巨大な「世界最大のフルーツ」、パラミツ(ジャックフルーツ、別記事で紹介)も同属だ。

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2010年6月4日金曜日

イヌムレスズメ(マメ科)

イヌムレスズメ(マメ科)
 ムレスズメに似ているからイヌムレスズメ。だいたい「イヌ」とは役に立たない紛い物を指すが、これは役に立たないというほどでもなさそうに思われる。
 ちゃんと比べれば、ムレスズメとは花も葉も全く違う。なのでエキノソファラ属(Echinosophora)に分類される。この属は朝鮮半島にしか分布しない珍しい属である。「Echinos」はハリネズミ、「sophora」はマメ科のエンジュのことなので、sが被っている。どうでもいいけどね。

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ムレスズメ(マメ科)

ムレスズメ(マメ科)
 ぱっと見にはエニシダっぽくもあるムレスズメ。ちゃんと棘もあるが、花の形は相当に違うムレスズメ属(Caragana)の落葉低木である。
 中国北部の原産で、江戸時代には日本で栽培されている。やたらと風雅な和名は、明治以降の和名とは違うよねぇ。

 なおイヌムレスズメという和名の植物は、さらに別属だ。

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ハリエニシダ(マメ科)

ハリエニシダ(マメ科)
 エニシダと同様に棘のある黄色い花のマメ科植物。
 ただしこちらは葉がすべて棘状になっているなど違いがある。なのでエニシダ属ではなくハリエニシダ属(Ulex)に分類される。
 西ヨーロッパ原産で、ヨーロッパでは生け垣に使われる木なのだが、日本ではあまり栽培されていない。

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エニシダ(マメ科)

エニシダ(マメ科)
 エニシダはマメ科エニシダ属の常緑低木。
 元はヨーロッパに自生する種が、世界に広まった。日本にも17世紀には既に伝来している。そしてそのために、この珍妙な和名になってしまったわけである。

エニシダ(マメ科)
 花を見た瞬間にマメの仲間だと分かるぐらい典型的な蝶形花冠、そして実るのは豆果。そういう意味では、日本でも違和感なく受け入れられたのかも知れない。
 現在のエニシダ属の綴りはCytisusで、これを音にすればキティスス。しかしこの植物は、かつてゲニスタ属(Genista)の花として扱われた。江戸時代にこれを運んで来たと思われるオランダ人の発音か、あるいはスペイン語だったのか諸説あるが、ゲニスタがエニシダの語源であったことは間違いないのだろう。

 なおゲニスタ属のヒトツバエニシダは、日本でもごく稀に栽培されている。棘がないので区別は簡単のようだ。区別する機会はそうそうないだろうけど。

ホホベニエニシダ(マメ科)
 最近は基本種よりも人気がありそうなホホベニエニシダ。意外に歴史は古く、19世紀末にフランスのノルマンディ地方で発見された。なのでNormandy broomなどと呼ばれるそうな。
 日本には明治の末には伝わっているから、もう百年は経っていることになる。

 なおエニシダには、ヒトツバエニシダのように別属だが似たような和名のものがあったりする。そもそも同時期に咲くマメ科の黄色の花の低木は、案外多いので見分けがつきにくいのである。

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